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 昨日、小さい男の子の手を握って色々な場所を巡る夢を見た。 男の子の手は暖かくてぷにぷにしていて、私の手に隠れてしまうくらい小さかったのを覚えている。 髪が茶色くて、前髪が少しぎざぎざしていた。 おそらくお母さんが切ったのだろう。 真新しい赤のトレーナを着ていて、青い柔らかい生地のズボンを履いていて、まだ歩くのがそんなに上手じゃない。 あんまり詳しくは覚えていないけれども、そんな感じの子だったと思う。
 
 その子の名前は分からないけれど、私はその子についての一通りの知識を持っていたように思う。 夢の中では名前を呼んでいた気がするし、その子の母親や父親に面識があった気がする。 その子の好きな物を食べさせるために、いくつものお店を巡ったような気がする。 ケーキ屋さんや、ファミレスや、駄菓子屋や、お好み焼き屋さん。 結局その子は最後に入った小さな洋食店が気に入り、オムライスを選んだ。 真っ赤なチキンライスに半熟過ぎない玉子が乗った、ありふれたオムライスだった。 でも男の子はそれをとても美味しそうに、一生懸命食べていた。
 
 夜になると、男の子は眠たそうに目を擦りはじめた。 まるで現実のように、私の夢の中では時間が流れていたのだ。

 眠気と疲れで歩けなくなったその子を抱っこすると、見た目よりも以外と重たかった。 はやくおうちに帰さないと。 そう思う一方で、彼の両親に返してはいけないという思いが私の中を駆け巡った。 理由は思い出せなかったけれども、私の中には彼を家へ帰してはいけないという確固たる意志があった。
 
 結局私はその子をおうちには帰さずに、私の行きたかったグランドホテルの屋上のビアガーデンへとつれて行った。 丁度、オクトーバーフェスが開催されていて、見慣れないオレンジがかったカラーのビールや様々な形のソーセージがテーブルに並んでいた。 立食ではなくちゃんと席が用意されていて、男の子の席も私の隣にあった。 彼の席には分厚いクッションが敷かれていて、かつ他の椅子よりも足が長かった。 彼が食事をするのに困らない高さだった。
 
 椅子に座らせてあげると、彼は周りの喧騒によって段々と覚醒していった。 私がハーブウィンナーを切って口へ運んであげると、まだ少し眠そうなとろんとした目でウィンナーを捉えて、ぱくりとかじりついた。 
 
「あら、どうしたの? その子。 随分眠そうじゃないの。」
 
 向かい側に座る男性が言う。 四角い顔に尖った顎、広い肩幅。 けれども彼は、パーティドレスを身に纏っていた。 大胆に肩を露出しており、おそらく背中もざっくりと開けているタイプのものだろう。 色は紫か、ピンクか、水色だったと思う。 見るたびに色が変わっていたような気もするし、あまりはっきりしない。
 
「本当はおうちに帰したかったんだけど、この子の両親、今日は仕事で帰らないのよ。」
 
 これは、嘘だ。 おそらく私は、もっと別の理由で彼を返さなかったのに、それを正直に口にすることはできなかった。 憚られた。 私はすらすらとこの子を返さなかった偽りの理由を、男性に述べていたのだった。
  
「まぁ、可哀想ねぇ。 こんなに可愛い子を置いて仕事だなんて。 アタシ嫉妬しちゃうわ。」
 
 彼はうーんと唇を尖らせてそういった。 彼の手にあるジョッキはもうほとんど空だ。
 
「それにしたって、ここはないでしょう。 流石にかわいそうじゃないの。」
 
「確かにそうかも知れない。」
 
 私は彼の言葉に従い、迷った挙句、私の家に連れて帰る事にした。 彼をどうして家に帰さなかったのか、理由は結局思い出せない。 しかしながら、私が覚醒直前に抱き上げたその子の体温と柔らかさとミルクのような甘い香りは今でも覚えている。

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プロフィール

帝埜 やしる

Author:帝埜 やしる
 
好きな作家:
 村上春樹、森見登美彦

作品の内容:
・ローファンタジー
・夢で見た内容など

執筆中:
・くじらの夢
・時計部屋の鍵と少女
・時市

完結:
・背の高い刑事と傷の少ない
 犯人の話
・ワールドプラネット

短編:
・タッタカタン
・冬の香り
・砂浜で埋もれていた亀の話
・公演会と誕生日会
・Settle Down
・ガラスの外殻を持つランプ

即興小説トレーニング
・甲板の男
・死にかけの血液
・気付かない振り
・二つの朝
・夢

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