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背の高い刑事と傷の少ない犯人の話 完

 それ以降の事はあまり覚えていない。ただ一つ言える事があるとすれば、彼女は今もまだ生きているということだけだ。彼女の受けた弾は、彼女の体内に留まることなく綺麗に貫通していた。……見事に急所を外して。

 僕は自分の見た事・知った事を全て話した。彼女は誘拐され、監禁され、性的暴行にあったがどうにかそこから逃げ出した事を。その間に無理やり子供を孕ませられ、産まされた事を。逃げ出す際に、子供を連れてこられなかったことを。それから思い立って子供を助けに行くも、”目の前で殺害され、逆上し、三人を殺害した上で山荘に放火した”事を。”たまたま”周辺各地で発砲事件を起こしているグループに攻撃され、丁度彼女が隠し持っていたライフル銃で応戦した結果、相手を返り討ちにした事を。それによって僕の命が助けられ、代わりに彼女が瀕死の重体に陥った事を。―――彼女の持っている力についての情報とそれに関する事柄についての、全てを除いて。

 結果として、彼女は罪には問われなかった。全くの無罪だった。それどころか、彼女に殺害された三人は、殺害された医師という立場にも関わらず酷く非難されることとなった。それぞれの遺族も飛び火を恐れ、方々に散り、既にひっそりと暮らし始めていると聞いた。





「……一つだけ、考えても答えがでない事があるんだ。 聞いてもいいかな?」

「あら。 分からないことは一つだけだって、前にも言ってなかったかしら?」

「それはそれ。 これはこれだ。」

「まぁ、いいわ。 それで、何が聞きたいの?」

「結局、この国に銃器を持ち込んだのは……」

「娘よ。 恐らく娘の力に気付いたあの三人が、他国から密輸して、欲しがりそうなグループに横流ししていたのでしょうね。 そしてだんだんと顧客が増えて、娘一人では仕事が回らなくなって……」

「だから君を探していたのか。 なるほどね。」

「まぁ、私が一人きりではなく、あなたと一緒に居た事は誤算だったでしょうけどね。」

 言って、彼女はくすくすと笑った。彼女の手首には、黒くなったリストカットの跡がいくつもあった。

 それから彼女は僕の手をとって、少し寂しそうな顔を浮かべながら、自分の頬へと運んだ。僕の手を取った彼女の手も、頬も、とても暖かくて、柔らかかった。

「あなたは、いつまでここに居るの? もう私の傍にいる理由はなくなったはずよ。」

 僕は彼女の頬を撫でながら、空いてる手で眼鏡をくいっとあげた。

「どこにも行かない。 ずっと傍にいるよ。」

 僕が答えると、彼女は小さくありがとうと言って、笑って、泣いた。

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Re: No title

はじめまして。コメントありがとうございます。

お褒めのお言葉ありがとうございます。
クールで好きというお言葉が、もう、最高に嬉しいです。

ラストらへん、早足で終わらせてしまったので、正直少し不満が残っております。。。
まだまだ満点の作品ではないので、これからも精進して行きたいと思います。

またお暇な時に、ふらりとお立ち寄りください。
お待ちしております。

No title

僕は、文学事情にうといものですが、
こんな高クオリティーの読み物なら
お金払ってもいいですね。

とんでもなく面白い展開でした。
文章もスタイリッシュで嫌味がないですし。
最初の男と女の微妙なやりとりがクールで好きです。
ただ、中盤あたりの風景描写に関しては、
主人公目線では無い方が、もっとクールだと感じます。
個人的に。
しかし、序盤のアンニュイな空気と、
ラストに世界観をひろげる手法は、かなりヤバかったです。


・・・それでは失礼しました。
プロフィール

帝埜 やしる

Author:帝埜 やしる
 
好きな作家:
 村上春樹、森見登美彦

作品の内容:
・ローファンタジー
・夢で見た内容など

執筆中:
・くじらの夢
・時計部屋の鍵と少女
・時市

完結:
・背の高い刑事と傷の少ない
 犯人の話
・ワールドプラネット

短編:
・タッタカタン
・冬の香り
・砂浜で埋もれていた亀の話
・公演会と誕生日会
・Settle Down
・ガラスの外殻を持つランプ

即興小説トレーニング
・甲板の男
・死にかけの血液
・気付かない振り
・二つの朝
・夢

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